030011
荒木聢志(昭和30年卒)
書・篆刻 「烽火連三月(「春望」杜甫)
   烽火連三月 家書抵萬金   杜甫「春望」
     
烽火は三月に連り 家書は萬金にあたう   (盛唐757年の作)
“国破れて山河在り、城春にして草木深し”で始まる杜甫の最も有名な五言律詩の転句である。“国破れ”の国は李隆基(玄宗皇帝)の治下44年目、盛唐の最晩年の事変で、“城春にして”の城は長安のことである。
756年11月に兵を挙げた安禄山は、翌年1月に洛陽を陥し、さらに長安に攻め上った。杜甫は蜀(四川)へ難を逃れた玄宗皇帝の行在所へ向かおうとしたが、運悪く捕虜となった。が、反乱軍の内部分裂のドサクサに紛れて長安を脱出した。その直前に書いたのがこの詩である。
戦いの烽火(狼煙)は3月(太陽暦では4月)になってもまだ止まない。“家族との音信は絶えてしまったが、もし消息が得られれば万金にも相当する”と、妻子を思う杜甫の素直な心情が読む者の胸をうつ名句である。
“3月に連り”を3ヵ月とする解釈は、戦火は既に5ヵ月続いているので当たらない。







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